東京高等裁判所 昭和55年(ラ)466号 決定
抗告人は、「原決定を取り消す。本件競落を許さない。」との裁判を求め、その理由として、抗告人は別紙物件目録記載の(一)(二)の土地及び同(三)の建物の所有者であり、かつ、本件競売の基礎となった抵当債権の債務者であるところ、抵当権の実行手続において、右(三)の建物のみについて競落許可決定がなされた。しかし、このような建物のみについてなされた競落許可決定は違法であるから、取り消されるべきである、と陳述する。
そこで考えるに、建物の競売でその敷地たる土地も同一所有者に属するため、建物のみを競売すると建物のためその敷地たる土地に法定地上権が生じ、これにより右土地が法定地上権の制限を受けることになる場合であっても、建物の売却による売却代金によって被担保債務を弁済するに十分であるときは、土地と地上建物を全体として一括競売した方が著るしく高価に売却でき、法定地上権によって制限を受ける土地所有権を保有するよりも著るしく有利であるというような特段の事情の認められない限り、建物のみを競売に付することはなんら違法ではないというべきである。
ところで、本件についてこれを見るに、本件競売申立の基礎たる抵当債権額は元利合計一五、五五八、七四九円であるところ、右(三)の建物の競落許可決定の価額は金二〇〇〇万円であって、右抵当債権の元利合計額の弁済をなし、及び執行の費用を償うに足りることは記録上明らかであり、そして、本件において右(三)の建物を右(一)(二)の土地と一括競売した方が抗告人に著るしく有利になるような前記特段の事情の存在することを認むべき証拠はない。
そうすれば、抗告人の本件抗告理由として主張するところは理由がないものというべく、その他には記録を精査しても原決定を取り消すべき事由を見出すことができない。
(渡辺 鈴木 渡辺)